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ステーキを堪能し 他の料理も全部平らげると 新は はい。とアルミカップを渡してきた。 「ホットウィスキー。少し肌寒くなってきたから よく温まるよ。」 ふうふうと息を吹きかけ 口をつける。 ふうわりとレモンの香りが鼻を抜け 胃がじんわりと温かくなった。 すっかり辺りは暗くなり 空を見上げれば満天の星。 目の前にはパチパチと燃える焚火。 「こうやってるとさ。現実忘れるよな。」 ポツリついそう溢すと 新はホットウィスキーを ゴクリと飲み干した。 「・・涼が忘れたい現実って何?」 ん。 何処となく寂しげな声音に視線を向けると 新は暗い目で じっと俺を見つめている。 「ああ・・。違うよ。新との生活が嫌だとかじゃ なくてさ・・。えっと・・。」 珍しいな。 普段 ストレートには聞いてこない。 黙って俺の様子を伺い 最善を選択して 接してくれてるのはわかってた。 いつも申し訳ないなって思ってて。 でも そんな新に甘えてて。。 新は ふぅ。と息を吐き出すと カップにレモンを 搾り入れ ウィスキーとお湯を注ぎ 俺の手から空のカップを取り上げると 今 作った物を代わりに持たせる。 「ごめん。でも もう話した方がいいと思って。 涼がストレス溜めて愚痴言ったりするの。 俺は全然嫌じゃないのね。一緒に居られない時間 涼が何をしていたのかわかるから嬉しいし 吐き出せばすぐに切り替えられるから。涼は。 だけどさ。今の涼を苦しめている事は違うでしょ?」 炭ハサミで焚火の薪の位置を変えながら そう言った。

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