63 / 292

2

「卵? いや・・。」 森保さんは怪訝そうに首を捻る。 ああ。やっぱり俺の勘違いだ。 こういう事多いんだよな。 なんか違和感とか 変化とかを勝手に感じちゃう。 思い込み激しいから。ホント。。 「す・・すいません。やっぱり何でもないです。 ちょっといつもより薄いかなって。 これでもすげえ旨いんですけど なんか ちょっと違うとか思っちゃって。 すいませんでした。」 急いで残りを平らげて 立ち上がる。 ポケットに手を突っ込み 財布を出すと 森保さんはちょっと待った。と俺を止めた。 「桜井。卵は今朝来たヤツだな。」 隣に立っていた男性にそう尋ねる。 「はい。今朝一番のを出してますから。」 こういう店は食材の拘りが強い。 契約している所から毎朝届く物を使うのも 当たり前だったりする。 ふむ。と卵を一つ取り 森保さんは ボウルに割ってかき混ぜた。 「色味はいつも通りだがな。。」 指を突っ込み ペロッと舐める。 途端に表情が強張った。 「違うな。確かに。」 森保さんはすぐ様電話をかけ 確認した所 相手先の新人さんが届ける卵を取り違えた事が 判明した。 ちゃんとした物が夜までには届けられると聞いて ああ。良かったと思っていると 森保さんはニコッと笑みを浮かべ 「兄ちゃん。助かったよ。ありがとう。」 そう礼を言ってくれる。 「いえ!すいません。余計な口出しして。 この卵なら出汁巻きとかなら旨いと思うんですけど ここの親子丼だとちょっと薄いかなって。 いつもと違うなって思っちゃったんで。 すいませんでした。えっと。お支払い。。」 森保さんは 腕を組み 出汁巻き・・と呟いた。

ともだちにシェアしよう!