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つまり自分が取り扱ってる自社製品にだって 合う料理があるって事で。 闇雲に使ってくれじゃ 意味がない。 それなりに製品には愛着があるし たまに開発部の同期と こんなの売れねえよ!って 喧嘩する程度にはいい物を売りたいって 気持ちがある。良くない物は勧められないって言って 売り上げを重視する上司ともよく揉めた。 実は内心ちょっとウンザリしていて。 会社の方針に合わせた方が楽なのかな。とか。 でも。やっぱり間違ってないって確信した。 「ありがとうございました。」 頭を下げて 今度こそ金を払おうと財布を出すと ふっと笑われた。 「兄ちゃん。営業さんだろ? 食品メーカーの。」 え。 「あ。はい。。でも何で。。」 森保さんはニヤッと口角を上げる。 「この間来た時 同僚と仕事の話してただろ。 カウンターの中ってのは 会話よく聞こえるんだよ。 相手がぐちぐち文句言ってんのに そうか? 俺。楽しいけど。って言ってて 噛み合ってねえなって笑ってたんだよな。」 隣の桜井さんも苦笑いを浮かべ 頷いた。 ああ。そうだったんだ。 やべえ。恥ずかしい。。 「いや。愚痴は俺も沢山言うんですけど。 仕事の中身自体にはあんまり。。 俺 飲食店回れるの嬉しいんで。 料理人さんって凄いじゃないですか。 俺は食うしか出来ないから。 ルームシェアしてる同居人も料理人なんです。 だから身近だし 努力してるのも見てるから 尊敬してて。あ。でも偉そうに口出したのは 本当にすいませんでした。」 頭を下げると ひらひらと手を振る。 「いや。兄ちゃん。いい味覚してるよ。 なかなか気づかないレベルだが だからって そのままにしてたら いつか味が落ちたとか 言われてたかもしれない。 小さなミスが取り返しつかない事になるのが うちらの仕事だしな。」

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