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「その代わり お前んとこの商品使って
試作品作るから味見もするんだぞ。
ちゃんと自信持って出せる物持ってくるんだろ?」
そう森保さんは言ってくれた。
わあ。嬉しい。
試作品食えるんだ。
「やります!持ってきます。食いたいです!」
思うままそう返すとまた皆さんにゲラゲラ笑われて。
それからだな。
提携商品は取り分が少ないって課長にガタガタ
言われたけど 森保さんは他のうちの製品も
使ってくれるようになって。
お弟子さんとか知り合いの店も沢山紹介してくれた。
この一歩がどんだけ俺を救ってくれたか。
感謝しても感謝しきれない。
ほらよ。と森保さんはカウンターに丼を置く。
「ランチの親子丼な。たまに違う物食いたそうに
する客もいるんだよ。連れに付き合って来た
みたいな人が 親子丼しかないのか。。ってな。」
ああ。成る程。それでか。
焦した醤油のいい香り。
あれ。これうちの。。
「この醤油。。」
「ああ。試してみろって この間持って来ただろ。
九州系の少し甘めの醤油だから照り焼きとか
旨いと思うってさ。だから照り焼き丼。」
おーっ。嬉しい。。
開発の同期 十条が力を入れている商品で
何とかって頼まれて 味を見て森保さんに
試してもらうようお願いしたんだけど
まさかこんなすぐに・・。
「いい香りですね。照りがまた見事で。」
仕事が違う。
この飴色はなかなか出ない。
パクッと口に入れると甘辛いタレに
弾力のある鶏肉がマッチして・・。
「抜群です。チョー旨い!」
ただな。
ふと また違和感を感じる。
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