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俺は融通利かないし。 会社の求めている事に応えられている気はしない。 一応実績があるから同期とあまり変わらず 役職もついてるけどこれだってここ止まりかな。って 内心思ってたりもする。 まあ。俺はいつまでも外回りがいいから それでいいんですけどね。 万が一仕事を辞める時。 新に言われて内心胸がドキンとした。 辞める・・・かあ・・・。 辞めたいとか思った事なかったけど それは別にやりたい事もなかったからで。 新卒で入って配属されて当たり前の様に 受け入れてやってただけ。 もっと自由に。 新みたいに考えられたら 俺の世界だってもしかしたらもっと・・・。 ・・って何が出来るかもわかってないのに 世界もへったくれも無いんですけどね。 はは・・は。 まあ。そんなこんなで。 でもそれから三沢は結構真剣に 仕事に向き合うようになってきていた。 一連の態度の悪さは 舐められない様にしようと 構えてたってのもあったらしく。 打ち解けると意外と素直な性格だったのもあって わからないとわからないって正直に言うから 店の人たちも面白がって揶揄うようになって 今は少しずつ結構いい感じになってきている。 近いうちにどこか専属で持たせてやれたら いいよな。。 ただまあ。木崎は相変わらず気に入らないようで。 「俺だって叶さんと一緒に仕事回りたいのに。」とか 意味不明な事を言って よく三沢と揉めている。 それに付き合ってるとめんどくさいんですよ。 ホント。 ね。 駅で降りて 商店街へと向かう。 ガラス張りの居酒屋を覗くと 一番奥の定位置の 座敷席に連中が見えた。 涼介はまた はあ。とため息をつき ガラッと引き戸を開け 中に入る。 店員さんに奥を指差し 頭を下げると 「叶さん!」 「叶さーーんっ!」 声がかかり ガックリと肩を落とした。

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