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ジーンがハンバーガーを食べ終わると 店を出て
ホテルへ行く。平日なのに 部屋はダブルベッド
一部屋しか空いていなかった。
電車で隣の駅にでも。。
そう思ったけど ジーンは頑として
首を縦に振らない。
「ここがいい。いいでしょ? 一緒のベッドに
寝た事だってあるんだから。」
外人が英語で駄々を捏ねる姿は目立つ。
それは子供の頃の話でしょ。
遊びに行った時に 子供部屋で寝ただけで
それ以外は一切無い。
日本語だってちゃんと喋れるのに 敢えて
英語を使うのも計算。
ジロジロ眺められ ウンザリする。
もう。。
しょうがないな。。
鍵を受け取り エレベーターに乗る。
腕にしがみつくのを振り解きながら廊下を歩き
鍵を開けて 部屋に入った。
「ジーン。シャワーはそこ。ガウンはここにあるから
使って。ああ。良かった。ソファーがあるな。
俺はこっちに寝るから・・。」
背中に ぎゅっと抱きつかれる。
「なんでそんな事ばかり言うの。
アラタ。わかってるよね? 俺・・。」
「わかってるよ。だからだけど。逆になんで
ずっと断ってるのにわからない?」
振り返り スパンとそう返すと ジーンは
みるみる涙を目尻に溜め始めた。
手の甲でゴシゴシと擦ると
俺の首に腕を巻きつける。
唇を押しつけてきたけど 何もリアクションしない。
ジーンは何度もそうして 仕舞いには
しゃくり上げるように泣き出した。
それでも正直何とも思わないくらいには
内心 腹を立ててる。
きっと涼の方が泣きたいくらいなのに。
傷つけて 身勝手に気持ちを押しつけてくるとか
身内じゃなかったら絶対に許さない。
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