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「だーかーら。叶さんは! 過小評価
されてるんです! 売り上げだけだったらぁ。
そりゃ 安田さんかもしんないですけどぉー。」
ベロベロの木崎が大声でそう言い始めると
「安田さんは チェーン店ばっか狙ってっからぁ。
だからだろー。評判悪いってぇー。
こないだ 浅間さん達言っててえー。
なのに あの人 叶さんの事 バカにしててぇー。」
ベロベロの三沢も大声で被せる。
あー。そうですか。
バカにしてましたか。
まあね。知ってるからいいですけど。
「揉めてたんじゃねえのかよ。」
笑いながら酒を飲む十条と 同じく同期で
総務の服部を睨みつける。
「さっきまでは揉めてたがな。今は二人で
徒党組んで お前を褒め倒してるぞ。」
十条はニヤッと笑みを浮かべ グビッと
水割りを飲み干した。
全然褒めてるように聞こえませんけど?
お互いをパシパシ叩きながら グジャグジャ言ってる
バカ共を横目に 涼介はグイッと冷酒を煽った。
あー。
空きっ腹に滲みる。
食い散らかした残骸には手をつける気がしない。
かといって 何か頼むのもめんどくさい。
「どうした? なんかあった? この間の一件は
落ち着いたんだよね。三沢がそう言っていたけど。」
服部は至って冷静にそう聞いてくる。
コイツは完全にラインに乗っている幹部候補。
気さくで優しくて。いいヤツなんだけどね。
沢山いる同期の中では唯一かな。
十条と服部とは 比較的付き合いが深い。
仕事でも相談に乗ったり乗って貰ったり。
とはいえ。仕事上での付き合いだけで
こうやって飲む事はあっても 俺は大概
途中で切り上げるんだけどな。
プライベートで話せる事なんて何も無いし。
だからあまり深酒もしない。
いきなり冷酒バンバン飲み出したら そりゃ
服部じゃなくても不思議に思うよ。
そりゃそうだ。
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