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へ? ぽかんと口が開く。 十条はワイシャツの袖に腕を通しながら ニヤッと口角を上げた。 「帰り道ずっと寝ながらぶつぶつ文句言っていたぞ。 本当は嫌だの。信じてない訳じゃないだの。 だけどやっぱり嫌だのなんだの。 お前。会社では全然弱音も吐かないし 怒りもしないし。愚痴とかも聞いた事がないが 恋人の前ではそうじゃないみたいだな。 で? なんか拗らせて やけ酒か。」 ・・恋人。 ・・相手。 え。もしかして。 サッと顔が青ざめる。 ヤバイ。何か俺。口走ったのか・・。 十条はそんな俺の様子に 「そんだけ身体中に痕付けられてたら 誰か居る事ぐらいは想像がつく。まあ。心配するな。 ソッチへの偏見は一ミリも無い。 俺にも同性の恋人が居た事ぐらいはある。 それにしても随分と嫉妬深い恋人だな。 それだけこれ見よがしに痕付けて。 男除けとしか思えない。」 ふっと笑い ネクタイを締めた。 げ。 布団を巡り身体を確認するとあちらこちらに キスマーク。。 ああ・・。 って。 ちょっと待て。 「・・え。そうなの?」 同性の恋人って・・。 十条はまたニヤッと笑う。 「それ相手には言わない方がいいぞ。 変に勘繰られても困るんだろう。」 「ああ。うん・・。」 スーツのジャケットを羽織り 鍵をポンと 俺に向かって放り投げる。 おっと。とキャッチすると十条はひらひらと手を振り 「カギ閉めたらポストな。ああ。 それから服部が今日は休みだって 橘課長に言っておくってよ。 総務として社員が具合が悪いのは見過ごせないって。 予定は全部木崎と三沢にやらせるから 少しゆっくり気分転換しろとの伝言だ。 お前ももうちょっと俺たちを頼れよ。 まあ。秘密主義な理由もわかったが これでもうそんなに気にする必要もないだろう。」 そう言って じゃあな。と俺を置いて 家から出て行った。

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