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「うん。わかってるよ。別に辞めて欲しい訳じゃ ないからね。俺も。安定性は飲食から考えたら 企業に勤めてる方が 絶対あるし 涼は仕事にやりがいも感じてるだろうし。」 当たり前でしょ。とそう返すと 意外だったのか へ? と涼は首を傾げた。 「じゃあ。なんで・・。」 そう。 なんで。だよね。 「店の為だよ。涼に関わって貰えたら もっと良くなると思ってるから。 ブレーンは絶対居た方がいいからね。 それにちゃんと対価を払って 発言に責任を 持たされた時 涼がどうなるのか見てみたい。 今はプライベートでーす。ってスタンスだけど 金貰うってなったら どうなるのかなと思って。 それから。これが一番の理由だけど・・。」 うん。と頷き 涼は続きを待った。 「今は辞めなくてもいつかは辞めるでしょ。」 いつか・・。と復唱して ピンとこないのか また首を傾げる。 「それって。定年の事言ってんのか。 相当先の話だぞ。それ。」 「うん。でもいつかは必ず来るよね。 会社を辞める時が。そうしたらどうする? 俺が店やってる間 ずっと家に閉じこもってるの? 勿体無いよね。せっかく涼には才能があるのに。 でも。今から店に関わっていけば 仕事を辞めても 涼には俺と一緒にやる店がある。 65から始めるのと 今から始めるのじゃ 天と地くらい開きがあるよ。 月イチの会議でもかなりの経験値だと思うけど。」 説明を終え ビールをグビッと飲むと 涼は 俺をじっと眺めながら はぁーーっと深いため息をついた。 「そんな先まで考えてんの。すげえなぁ。 俺なんて昼飯何食うかさえなかなか決めらんないし 決めたってその通りにもなんないのに。」 「ライフプランは大事だよ。涼だって 先々考えて貯金してるって前に言ってたよね。 それに・・・。」 ぎゅっと涼の手を握る。

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