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ドアが開き 沢山の荷物を持った女性が 入ってきて 新は目を丸くした。 あれ。 「・・静香さん。どうしたんですか。」 涼のお姉さんの静香さんはニコッと笑い 「急にごめんね。今日休みだよね。 前 うちに来た時に休みも仕込みだって言ってたから いるかなと思って。」 そう言ってカウンターの上に よっこらしょと荷物をドサッと置いた。 「旦那の田舎から野菜 沢山送ってきたからさ。 うちじゃ食べきれなくて 新くんに少し引き取って 貰おうかと思って。無農薬だから大丈夫よ。」 はい。と紙袋の中からビニール袋を出す。 「ありがとうございます。」 新は頭を下げてビニールの中を覗き込んだ。 「ああ。いい野菜ですね。」 「でしょ。でもさぁ。有難いんだけど 年寄にうちら夫婦だけだから消費しきれなくて。 だけどいらないとも言えないから困るんだよね。」 水を入れたコップを出すと カウンターに座り ゴクゴクと一気に飲み干す。 「今日はお仕事じゃなかったんですか。」 静香さんも大手企業に勤めるキャリアウーマン。 産休・育休が明けて すぐに復帰して 今はかなり忙しく働いているとは聞いていた。 「休日出勤の代休。ホントはさ。 愛梨もいるから休日出勤とか無理なんだけど 子供がいるからこれは出来ません。 あれも出来ませんなんてやってると 仕事何にも出来なくなっちゃうんだよね。 それでなくても急に熱出して休まなきゃ いけなくなったり 保育園の時間もあって 残業は出来ないとかあるから・・。」 コーヒーを出すと ありがと。と微笑み カップに口をつけ 「母親が手伝ってくれないと仕事なんか出来ないよ。 それだってやっぱり後ろめたい気持ちもあるしね。」 はあ。と深いため息をついた。

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