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エレベーターで3階へ。 ドアが開くとすぐに店の前。 スモークが張られた自動ドア。 中に入ると夜の海のイメージなのか 薄暗い店内にブルーの照明。 天井にゆらゆらと波が揺れているような演出。 と。 オッサン二人が来るような店じゃありません。 店員さんに予約が入ってるらしいと言うと こちらにどうぞ。と廊下を奥にどんどん歩いていく。 ああ。新が言ってた通り。 個室ですね。 はい。 それもドアを開ける系・・・。 中に入るとテーブルにはウィスキーのボトルが ドンっと置かれ 見ると半分も入ってない。 顔を赤らめ ご機嫌な様子で泰雄さんは 「涼くん。遅いよ。こっちこっち。 こっち座って。」 俺の腕をグイッと引っ張りL字型のソファーへ ドスンと座らせた。 完全に出来上がっちゃってますけど。 こんな風に酔っぱらってるこの人は見た事が無い。 いつだってちゃんとしてて 一歩引いた状態でニコニコしているイメージ。 店員からグラスを貰い ドボドボとウィスキーを 注ぐと無理やり俺の手に持たせる。 早く出て行けと店員を追い返し 後ろ手に ドアを閉めると ソファーに戻って自分のグラスを 掲げてみせた。 「はい。カンパイ!」 カチンとグラスを音を立てて合わせる。 仕方なく口をちょっとだけつけ 「で。話って何ですか。」と切り出すと 泰雄さんはトロンとした目を俺に向けた。

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