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「なんで。俺に相談してこないの。
言ったよね。あの時相談に乗るよって。」
暗い瞳で俺を見つめながらそう責め立てた。
「いや。だって相談する事なんて
何も無いんで・・。」
なんで俺がこの人に相談しないといけないんだろ。
義兄だって言ったってほとんどまともに
話したことも無ければ この人が何をしてるのかも
良く知りもしない。
興味が無いって言ったら悪いかもしんないけど
姉ちゃんの旦那なんて親戚であっても
ほとんど他人みたいなもんで。
でも その答えが気に入らなかったのか
泰雄さんは大声で捲し立て始めた。
「いいかい。男同士の関係なんて
誰からも認められないんだよ。
それを俺がわかってやるって言ってるんだ。
有難く思うならともかく 口留めしにもこない。
いいのか? 俺が全部バラしても。
家族が崩壊するかもしれな・・。」
「いいですよ。別に。」
遮るようにそう返すと 泰雄さんの眉間に
みるみる皺が寄る。
「・・いい・・って・・。」
テーブルに置いてあった氷をグラスに入れ
炭酸を注いで薄めてから口につけた。
ああ。この方が飲みやすいや。
新が作ってくれるウィスキーのソーダ割りの方が
全然飲みやすくて旨いけど。
あれって多分普通のソーダ割りじゃないんだよな。
「だから。いいですよ。言ったって。
色々考えたんですけど もう腹括ったんで。
俺は新と生きていくって決めましたから
親にも誰にもバレてもいいです。
言いたかったら好きにして下さい。」
「か・・会社にだってバラすかもしれないんだぞ。
そうなったら仕事だって・・。」
コクンと頷き どうぞ。と言うと
泰雄さんは あんぐりと大きな口を開けた。
「仕事辞める事になると思いますけど
俺。今 夢があるんで別にそれならそれでいいです。
会社に居た方が安定性があるし
今は金も貯められるからその方がいいですけど
バレて居づらくなって辞めるってなったら
別にそれはそれで。」
そう。
俺は新に教えて貰った。
自分にとって何が一番大事なのか。
勿論バレないに越した事は無いですけどね。
でもそうなったらそうなったで
自分には生きていく道がある。
新と一緒に生きていく道が・・・。
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