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「静香ちゃんがしてくれないんだよ。
子供が起きるだとか疲れてるだとか。
俺の方が疲れてるのに 労わってもくれない。
だから代わりに相手して貰おうと思ってね。
男はいいよな。妊娠する危険も無いし
少しぐらい手荒く扱ったって構わない。」
そう言って俺の両腕を抑え込む。
ああ。それでこの個室ですか。
防音がバッチリで 呼ばない限り店員も来ない。
いわゆるそういう事が出来やすい店として
有名だって新が言ってたけど。
嫁の弟に手を出すとか それがどういう事かも
判断つかないくらいに酔っぱらって・・。
っていうのがこの人の言い訳で保険。
ここを予約してる時点でそういう気
満々だって言ってるようなもんなんだけどな。
復讐かな。
世間や姉ちゃんや親や会社に。
我慢して報われなかった復讐。
俺と新の関係もめちゃくちゃにしてやろうって。
ね。
酒臭い息を吐く口が近づいてくる。
涼介が精神統一にそっと息を吐いた時
ドンドンと激しくドアを叩く音が部屋に鳴り響いた。
泰雄さんの体がビクッと大きく揺らいだ瞬間
頭突きを思い切り喰らわせる。
「があっ!!」
頭を押さえ仰反る腹に 半身起こして
正拳を突き入れると ぐぶっと鈍い音を漏らし
泰雄さんはソファーから落ちて
ドスンと床に転がった。
舐めないで欲しいんすけど。
俺。一応 中学ん時 無敵だったんで。
なんちゃって。
バカか。
自分で自分にツッコミながら ヤレヤレと
立ち上がる。
ドンドンドアを叩く音がデカくなり
はいはい。と鍵を開けると
部屋に飛び込んできた新は俺を掴み
ぎゅっと抱きしめた。
慌てたように全身に大きな手を滑らせる。
「涼! 大丈夫・・・みたい・だね。」
床に転がり シクシク泣き出した泰雄さんへと
目をやると そう言って ホッと安堵の息を吐いた。
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