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いかがでしょうも何も・・。
図面の他に 既に取ったらしき見積書。
「・・やる気満々じゃねえか。」
ちろっと睨むと ニヤッと笑われる。
「まあね。CEOに話を持って行く時は
しっかりと準備してからじゃないと
許可されないってよくわかっておりますので。」
得意げにそう言って ビールをグビっと飲んだ。
それにしたってさ。
「お前。そんなに人入れるの嫌なの。」
どうしてもそこが不思議で。
人当りもいいし誰とでも上手くやれる。
だからなんでそんなに嫌がるのかがよくわからない。
新は唐揚げを摘まみ ぽんと俺の口に入れると
もう一つ取り 自分の口に入れる。
ハフハフ・・。
にんにくが効いてて旨いなぁ・・。
俺に食わせてくれる時は俺の好みに合わせて
作ってくれてるから 味が濃い目で何よりデカい。
とにかくホント旨いんです。マジで・・。
新もモグモグしながら 首を捻った。
「嫌っていう訳じゃないけど。」
「うん。」
「涼が言ってくれたでしょ。一緒にいつか
店をやるのが夢になったって。」
ああ。
言ったけど。
で。実際そうだし。
定年後かもしれないけど いつか絶対に一緒に
やっていきたいなって思ってて。
だからCEOの立場も対価も受け入れた。
でも。
「だけどさ。それこそホントに定年後って
なったら何十年も先の話だぞ。」
「そうだよ。だからそれまでは一人で
回せる方法を考えるほうが建設的でしょ。
人を入れると今度はそっちにも思考が
持っていかれるじゃない。
世の中いい人ばかりじゃないし
休まれたり 煩わしかったり。
そういう無駄な時間を割くぐらいだったら
料理の事だけ考えていたいんだよね。」
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