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ああ。まあ。
確かにな・・。
CEOに就任して 店の経営にも関与するように
なってから思ったけど。
新は本来タイプ的にオーナーシェフじゃない。
どちらかというとシェフに専念していたいみたいで。
それもあったから俺をブレーンに
入れたがったのかな。
経営絡みの雑用や金計算なんかやってやると
本当に喜んで。これは仕事外でも出来るからと
今じゃほとんど俺の受け持ちになってる。
新もずっとやってたんだし 出来ない訳じゃないけど
そっちに時間を使うより メニューを考えたり
仕込みや試作を作る時間が欲しいみたいだった。
対価を貰うようにしたからか
頼みやすくなったみたいだし。
ホントに料理が好きなんだよな。
勉強熱心だし チャレンジャーだし貪欲。
ジャンル問わず いい物を出したいって頑張ってる。
夜は相変わらずTEXMEXも出してるけど
あまりもう拘りは無いらしい。
アレンジして日本人が好む味付けにしてるし
酒に合う料理が中心で 幅広い客層に支持されて。
お通しは必ず和風にする気配り。
グリル料理は肉も魚もどれもボリューミー。
人気メニューのナチョスはおつまみに最高で。
チップスの上にレタスやトマト。
ひき肉がスパイシーでオリーブゴロゴロ。
チーズがとろーっとかかって焼き目がついて
手作りのサルサソースがこれまた旨い。
暑い日に一日営業で出歩いてて 帰った後
キンキンに冷えたジョッキで生ビール飲みながら
ナチョス摘まむと もうーーーっ。
最高なんです。ホント。
ね。
「ナチョス。旨いよなぁ・・。」
思考そのままにぽつっと呟くと
え?と新に聞き返された。
やべ。
急いでブンブン首を振る。
「いやさ。新って確かにホント料理作るの
好きだよなって思って。考えるのも好きじゃん。
充分旨いのに もっともっとってさ。
それってなかなか出来ないよな~。
だから。人入れて余計な事で
煩わされたくないってのは まあ・・。
うん。わかるけど。」
頷きながらほろほろの角煮を口に入れる。
「んまぁーーーーい。」
ほっぺたを押さえながら身悶えると
新は嬉しそうに笑みを浮かべた。
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