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「じゃあ雨宮さん。すいませんがよろしく お願いします。」 三沢と一緒に涼介は深々と頭を下げる。 坊主頭で細身ながら筋肉モリモリの雨宮さんは ジロッと三沢を睨みつけ 「おう。ガキ。ちゃんとやらねえと てめえの大事なモン 引っこ抜くからな。 わかってんな。」 ドスの効いた低音ボイスで そう言った。 「はっ・・はいっ!頑張りますっ!」 三沢は直立不動で返事をし また深々と平頭。 足がガタガタ震えてる。 その様子を眺めながら 涼介は苦笑いを浮かべた。 有休取得プロジェクトに着手すべく 三沢にまずは一店舗 専任で持たせてみようと思い。 最初がアレだった割には 取引先の皆さんにも 可愛がって貰えるようになってんしな。 まあ。大丈夫だろ。 なんて思ってたんだけど どうもご本人が 自信が無いようで。 「無理っす。俺。叶さんみたいには 出来ないんで・・。」 三沢は青ざめながらぶるぶると首を振る。 「別に俺みたいにやらなくてもいいんだって。 ちゃんと相手の要望を聞いて 自分の知識から 最善を提案して注文を貰う。 それだけでいいんだよ。」 そう言うと 三沢はくしゃっと顔を歪めた。 「そんなに簡単に言わないで下さい。 俺。企画営業とか絶対無理っす。。 もうちょっと勉強させて下さい。」 ・・勉強って言えばいいと思ってるだろ。お前。 とは思ったけど。 じゃあ。まあ とりあえず荒療治で無理矢理 持たせちゃうかと思って。 当初から頭に浮かんでたのが雨宮さんだった。 雨宮さんは森保さんの所から独立して 焼鳥屋さんをやっている。 森保さんの店よりどちらかというと 庶民的でリーズナブル。 お持ち帰りの焼鳥も人気の繁盛店。 最初 森保さんに紹介して貰った時は 大丈夫かなって思いましたけどね。。 なんせ風貌がヤバイ。 どう見てもその筋の人。 話すとべらんめえでとにかく口が悪い。 でもまあ。 学生の頃そういう系統のど真ん中にいた身としては そんなにビビる事も無く。 で。やっぱり話してみたらいい人で。 何故か気に入って貰ったのかすごく可愛がってくれて 雨宮さんから紹介して貰った取引先も沢山ある。 面倒見がいい人だから顔が広いのなんの。 森保さんもそうだけど 雨宮さんも俺の大恩人。 なんですよ。 ホント。

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