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で。どうせ預けるならこういう人の所の方が
厳しいし それこそ勉強になるかな。と。
そう。その通り。
勉強って言葉に逃げるとこういう事になるんです。
うん。
ね。。
という事で。
「あの。うちの三沢。そろそろ担当を持たせたいって
思ってるんですけど・・。」
打合せが終わったある日。
そう切り出してみた。
案の定 怪訝な顔をされましてですね。
「あのガキか。」
ぶっとい腕を組み うーん。と雨宮さんは
唸り声を上げた。
「自分で切り開いて掴んだ得意先じゃなきゃ
意味がねえんじゃねえのか。」
まあ。そうなんですけど。
これは正直に言った方がいいな。
「そうなんですけどね。下を育てるのも仕事だって
言われるんですよ。それに俺。休み取ってなくて
ちょっと会社に目をつけられちゃってて。
俺の代わりに出来る様にしないといけないんです。」
「休みなんて無理矢理取るもんじゃねえだろ。
なんなんだよ。最近はよ。
休みを取る権利があるとかよ。
すぐそういう事言いやがるんだよな。」
雨宮さんは憮然とした表情でそう言った。
ああ。
この間辞めた従業員さんかな・・。
飲食店はどこも人手不足。
最近はちょっとキツイとすぐ辞めるらしく
労働基準法がどうたらこうたらと
弁だけ立つ奴も多いらしい。
雨宮さんの所もそうらしく なかなか
お弟子さんが育たない。
まあ。口調も厳しいし 今の世の中だと
それこそパワハラってヤツになっちゃうんだよな。。
雨宮さんは口は悪いけど 雇った従業員さんに
最大の愛情をもって接してるのは知ってる。
片腕の真島さんは長い間雨宮さんの傍に居て
「いい加減独立しろって言ってんだけどよ。」
と雨宮さんが心配しているくらい。
でも。
雨宮さんが居ない所で話してくれたけど。
「俺が居なくなったらそれこそ大将が
大変になりますから。今の若い奴はすぐに
辞めるし バイトも続かないんですよね・・。」
真島さんは逆に雨宮さんが心配で
なかなか独立に踏み切れないみたいだった。
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