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「俺の店につけたらそれこそあのガキ。
パワハラだなんだって騒ぐんじゃねえのか。
俺は優しく指導なんて出来ねえぞ。」
雨宮さんはそう言って 俺の前に
ドンっと焼鳥が乗った皿を置いた。
ん。
珍しいな。
雨宮さんの店は塩を売りにしてて
つくね以外はタレの焼鳥は出さないのに
目の前に出された焼鳥はどう見てもタレ。
「親方の所に持ってっただろ。醤油。」
雨宮さんは不服そうに唇を尖らせてそう聞く。
ああ。
照り焼きの。
「ええ。俺の同期が開発した醤油なんですけど。
森保さんに試して貰って ランチの丼に
今度使ってもらう事になりました。」
色々と試行錯誤した結果 サンプルで持っていった
B級品の糸唐辛子を使ってもらう事になり。
照り焼きの上に 桜井さんが色々試して
これだって決定した卵の黄身を乗せ
その上からぱらぱらと糸唐辛子。
これがまあ。バランスが最高で。
すげえ旨いんですよ。ホント。
親子丼と人気二分するんじゃないのかなって
内心思ってる。
真島さんも桜井さんも店では二番手なのに
凄いんだよなぁ・・。
実力も。内面も。
二人ともしっかりと親方・大将を支えてて。
ちょっと羨ましい関係性。
俺なんて三沢と木崎ですからね。。
酒飲んでぐちゃぐちゃ文句言って。
上司褒めてるつもりでガンガンにけなすという。。。
はあ。。。
まあ。しょうがない。
橘課長に言われた通り 俺が育てないから
こういう事になってるんですよ。
はい。
で。
「それがどうかしましたか?っていうか
珍しいですよね。タレなんて。」
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