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雨宮さんがこれを出したのは ハナから
俺にダメだと思わせる為。
でも 使える可能性があるがどうする?って
聞いている。
頭には多分解決策も幾つか浮かんでるんだろう。
最終的に味を決めるのは勿論店主だしな。
ただ じゃあ使うかどうか。
使って貰えるかどうかは こっちの出方。
と ボールを渡されたって訳。
新に言わせると ここまでやんなくてもいいらしい。
とはいえ もうずっとこうやってきちゃってるし
どうせなら 使って貰いたい。
十条が開発したこの醤油はまだ軌道に乗っていない。
取り扱い先を増やして ある程度の一定数を
確保しないと 生産中止になる可能性もある。
せっかくあれだけ必死に作ったんだし
それだけは避けたいよな。
自信を持って売れる商品だし 雨宮さんの店でも
上手くいけば 他への展開も見越せる。
それに上手く持っていければ他のモノも・・。
一応営業なんでね。
腹の中では他のモノもこの機会に使って貰えたら
なんて事もやっぱり考えるもんなんですよ。
やっていく過程で他に必要な物が
出てくるかもしれない。
こればかりは直感でしかないので
はっきりどうとは現段階で言えないけど
多分 雨宮さんはその辺りを見越して持ちかけて
くれてる。本来ならうちなんか頼らなくても
自分で当たり前の様に作り上げられる人だ。
ビジネスチャンスを与えてくれてんだよな。
俺の為に。
だからこそ。
三沢は今まで俺について注文を取ったり
手配したり事務処理したりで
お店とガッツリ組んで何かを作り上げた事が無い。
そうやって初めてうちの商品を使ってもらえた時
すげえ嬉しいんだよな・・。
それを知って欲しかった。
「ちゃんとフォローしますんで。
これ。組ませてやって貰えないでしょうか。」
ぺこりと頭を下げると 雨宮さんは
うーーん。と唸る。
暫くの沈黙の後
「パワハラって訴えやがったらただじゃおかねえぞ。
泣き言言っても相手にしねえからな。いいな。」
そう釘を刺し 雨宮さんは渋々了承してくれた。
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