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足取りが重くなるって この事だよな。。
三沢は肩を落とし とぼとぼ店に向かっていた。
気が重い。
何しろ 迷惑かけてるのがわかってるから。
雨宮さん。ホントは俺なんか相手にしなくても
一人で出来るんだし。
当たり前だけど。
それでも俺に意見聞いてくれて
なのに全然まともな答えも返せない。
最初はとにかくビビっちゃって
味もへったくれも無くて。
今はやっと少しは落ち着いて味わえるようには
なったけど。
だけどなぁ。。
美味くない理由がわかんないんだよな。
なんとなく。
なんか美味くないけど・・みたいな。
親が離婚して 母ちゃんはずっと外で働いてて。
正直貧乏だったし 兄貴が作ってくれた
飯を食って育ったようなもんで。
缶詰とか焼きそばとかうどんとか。
外食だってたまに連れてってもらった
ファミレスが嬉しくて嬉しくて。
そのレベルの人間が偉そうに味なんて
語れる訳が無い。
あー。マジでどうしよう・・。
これ以上迷惑かける訳にはいかないよな。。
珍しく終日内勤だった叶さんに
思い切って そう言ってみたんだけど。
「叶さん。やっぱり俺には無理っす。。
雨宮さんに申し訳ないですし
これ以上無駄な時間費やさせる訳にも・・。」
叶さんはパソコンへ向かいながら
ちらっと俺へと視線を向けた。
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