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「俺。貧乏だったんで 地域で祭りがあって
縁日に行っても他の友達より金持ってなくて。
でもどうしても屋台で焼鳥買いたかったんです。
だけど お金足りなくて・・。」
周りの友達はいっぱい色々買って食べて。
羨ましかったよな。
それでも小遣い貰えただけいいなって思ってて。
兄貴は行かないって我慢してたし
俺だけ行かせて貰えて申し訳なかったぐらいで。
親友の誠が可哀そうに思ってくれたのか
「これ食えよ。」って1本の焼鳥の半分
食わせてくれた。
「それがすごい甘くて美味かったんです。
喜んでたらタレも舐めていいって言われて
容器に残ったタレも全部舐めて・・。」
だけど。
それが友達連中に知れ渡り 意地汚いって言われて
母ちゃんには「いくらお金が無いからって・・。」
恥ずかしいってワンワン泣かれた。
「でも。子供心に何が悪いのか全然
わかんなかったんすよね。だってタレ美味かったし。
甘くてテロテロしててトローっとしてて。
なんか水飴や黒蜜みたいに濃厚だったなぁ。。」
まあ。恥ずかしい思い出だけど。
っていうかこんなの何の役にも立たないよな。
「あ。すいません。。。全然関係ないっすね。」
何言ってんだろう。
その時 少し離れて不貞腐れた様子で
足をぶらぶらさせて椅子に座っていた
若い従業員さんが ゲラゲラと笑い出した。
「くっだらねえ。何 その貧乏話。」
「山崎。お前は黙ってろ。」
真島さんが急いで遮り すいません。と
俺に謝ってくれる。
うーん。と檜垣さんが声を上げた。
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