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「くだらなくはないよね。これ。 かなり盲点突いてるんじゃないのかな。 雨宮さん。もしかして・・。」 檜垣さんがそう言うと ずっと何故か 黙り込んでいた雨宮さんはギロっと檜垣さんを 睨みつけ コクンと頷く。 「それだな。どうしても俺は親方の店の味を 継承してるからどっか上品でアッサリとしてんだよ。 そこを疑う事も正直しねえしな。。 そうか・・・。テロテロでトロッと黒蜜みたい。。 それは醤油と砂糖の割合の問題だけじゃねえな。 涼が持ってきた醤油ばかりが頭にあって 根本を見逃してたか。。」 そう言うと 鳥の手羽先、モミジ。 他にもよくわからない鶏の部位と骨。 色んな果物にニンニク、野菜を冷蔵庫から出して どんどん並べていく。ワインにお酢、みりんに 醤油もうちの以外にたまり醤油まで。 「手羽は入れてんだけどな。それだけじゃ旨味が 足りてねえって事だ。いくらスタートだって 言ってもよ。どうしても大味になるのを 怖がってたんだが もっとやりすぎぐらいに やっちまえばいいのか。真島!」 はい。と返事を返す真島さんを睨みつけ 「今日は臨時休業だ。今からコイツを必ず仕上げる。 三沢。お前はどうする。手伝うか?」 俺に視線を向けると 腕を組みそう聞いた。 ・・どうする。 もう醤油も何も関係ないトコに来ちゃってるのは わかってるし この後も仕事はある。 だけど。 きっと叶さんに事情を説明すれば 調整してくれるよな。 よし。 「手伝います!」 何が出来るかわかんないけど 手伝えるなら やってみたい。 すると 山崎さんが大きな欠伸をしながら 立ち上がり やれやれと首を振った。 「じゃあ俺は帰らせてもらいます。 バカらしくて付き合ってらんないんで。」 その言い草に普段温厚な真島さんも 表情を強張らせた。 「山崎!」 「あ・・あの・・・。」

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