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「・・ですから。叶様からもお話
頂けないでしょうか。
くだらない店の経営など辞めて・・。」
へ?
「ちょ・・ちょっと待って下さい。」
今。この人 何て?
「あの。。くだらないって何ですか。」
は?と久米さんは 不思議そうに首を傾げる。
「はい。ですから お父様は新様に早く
くだらない料理人の仕事など辞め 店を畳み
会社へ入って頂きたいと・・。」
「何がくだらないんですか!」
ドンっと思わずテーブルを叩く。
ガタッとコーヒーカップが揺れ 受け皿にコーヒーが
溢れたけど そんな事はどうでもいい。
拳がワナワナと震えてくる。
くだらないって何だよ。
新が日々取り組んでいる事はくだらなくなんてない。
あんなに一生懸命で。
睡眠時間も削って頑張ってて。
あれだけ楽しそうに。
くだらないなんて言葉に簡単に置き換えられるような
仕事じゃない。
その言い草はあんまりだ。
久米さんは 俺のあまりの剣幕に 流石に
まずかったと思ったのか
「申し訳ありません。」
深々と頭を下げた。
「しかしながら 叶様も企業にお勤めでしたよね。
飲食などいわゆる水商売。いつ立ち行かなくなるかも
わからない不安定な職業です。」
頭を上げると 冷静にそう言って コーヒーを
コクっと一口飲む。
・・そうだけど。
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