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しっかりと反論したい。
脳内でちゃんと固まってないけど
それでも言わなきゃいけない気がする。
でも。感情論で話してもこの人には
きっと響かないよな。。
今 こうやって涼しい顔してんのも
そういう意味で俺に無言で圧をかけてる。
うーん。
手強そうですが・・・。
まあ。普段もっと手強い方々とやり取りしてますし。
ね。
よし。
震える拳を一旦仕舞い 深呼吸。
姿勢を正して 口を開いた。
「あの。企業に勤めてるから絶対安心でも
無いと思うんですが。今はどこの企業も
生き残りに必死だし うちの会社もそうです。
それなりにデカイ会社ですけど。」
一応そんな風に言ってみる。
あの会社に勤めてる利点は
ネームバリューぐらいだって正直思ってるしな。
溢れたコーヒーをナプキンで拭き
カップに口をつけて喉を湿らせ続ける。
「仕事ってどういう気持ちで向かい合ってるか
それが一番大事だと思うんですけど。
勿論 精神論だけじゃ食ってはいけないし
そんなに甘いもんじゃないのはわかります。
だけど アイツは例え店が上手く行かなくなっても
自分の力で這い上がれるだけの実力もあるし
それだけ毎日必死に頑張ってます。
ずっと傍で見てきて 努力は裏切らないなって思うし
自分自身何が足りないか ちゃんとわかっていて
きちんと向き合っているんです。」
そう。
雨宮さんに色々教えて貰ってるのも
近所の飲食店さんと仲良くしてるのも
修行していない分 毎日が修行だって
思ってるからで。
別にいいやって思うじゃん。普通。
今だって充分旨いのにな。
あんだけ店に客来てて 売上だっていいのに。
新は絶対に怠けない。
そんなのなかなか出来る事じゃないのに
くだらないの一言で片づけてなんか欲しくない。
それに・・。
「俺の言う事聞くって 別にそうでもないですよ。
基本的に泣き言とか一切言わないし
俺が知らなくてもいいと思ってる事は
絶対に口にしない。俺がこうしろって言って
何かするとかって奴じゃないです。
お父さんからそんな話が来てたのも俺は知らないし
あなたがこの間店に来た話だって
何も聞いてません。
俺を煩わせて心配させるくらいなら言わない。
そう思うのが新なんで。
俺はそれがアイツの思いやりだと思ってます。」
うん。
そう。
何でも話して欲しいとか。
そりゃ思う時もあるけど でも新が俺を想って
そうしてくれてるのは重々承知してる。
俺はすぐに悩むし グチグチするし。
自分で処理しきれなくて新に聞いて貰って
考えを纏めてるくらいおんぶにだっこ状態。
そんなダメダメパートナーに
更にディープな話ぶっこんで心配させるなんて
する訳ないんですよ。
あなたの新様は。
ね。
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