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ああ。そっか。
「雨宮さんとこ行ってたんだっけ。
三沢に会ったか?」
プライベートはあまり知られたくないんだけど
まあ。新が余計な事を言う筈も無し。
雨宮さんから誘われて断れる訳も無し。。
ネクタイを外して ジャケットを脱ぎ
椅子の背もたれにかけると よっこらしょと座る。
すぐに生ビールを出してくれた。
「うん。一生懸命手伝ってたよ。
不器用なりに皮剥いたりさ。
雨宮さんもテンション上がっちゃってるから
かなり言葉も荒かったのに 文句も言わずに。
余りに必死で その姿勢に感化されたのか
例のやる気のない従業員。下手くそとか言いながら
一緒に手伝いだしてね。」
あー。
アイツか。
山崎・・さんだったっけ。
雨宮さんの兄弟子の息子さんで
跡を継がせるために働かせていたのが
どうにもならないからって
雨宮さんに面倒見てくれと押しつけたらしく。
「大将と違って兄弟子はあまり一生懸命な方では
無いので それが悪い風に身についてしまって
いるんですよね。器用に何でもこなすのに
もったいないなとは思っているんですが。
兄弟子の息子という事もあり 態度も横柄で・・。」
真島さんは困り顔でそう言ってた。
へえ。
三沢がいい影響与えたのかな。
あの三沢がねぇ。。。
まあ。手伝いたいから仕事代わりにお願いしますって
連絡してきた時もビックリしたけど。
で。
「これが出来上がりか?」
ビニール袋の中を覗くと甘い香りが鼻を擽る。
新はふるふると首を振った。
「途中経過って感じかな。まだ多分やってるよ。
真島さんが何度も三沢くんに帰ってもいいって
声かけても大丈夫ですの一点張りでね。
そうそう。カッコよかったんだよ。三沢くん。」
そう言って 山崎さんに向かって啖呵をきった様子を
話してくれる。
へえ・・・。
「歴史のスタートね。。」
アイツも結構いい事言うなぁ・・。
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