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「ホントその通りだと思ってね。俺もそうだけど
雨宮さんも一代で焼鳥屋をやってるから
それなりに引け目を感じていたらしいんだよね。
独立したからには森保さんとは違う路線を
打ち出さないといけないでしょ。
でも焼鳥に特化した修業をした訳じゃない。
塩に拘ってたのは 森保さんの所でずっと
焼き場をやっていたし 自信があったんだって。
特に焼鳥屋のタレは代々受け継がれて
作り上げていくって頭もあって 良い醤油に
巡り合わないからって取り組んでなかったのは
自分に言い訳してただけだって笑ってた。
歴史がスタートするんだったら
頑張らなきゃいけねえなって嬉しそうだったよ。」
新はそう言って ビニール袋を俺から受け取ると
焼鳥を取り出して温めてくれる。
そっか。
みんな色々悩んだり 逃げたりしながら
それでも前に進んでるんだよな・・。
やっぱり。
良い職業ですよ。
くだらないとか あり得ない。
うん。
それに少しでも参加させて貰える俺たちは
幸せだってもんです。
ね。
三沢も良かったなぁ・・。
新が出してくれた焼鳥に齧り付く。
甘い濃厚なタレがトロっと口内に染み渡り
果物だろうかかなりフルーティ。
砂糖も多分数種類使ってる。
「ああ。今までと随分違うな。充分旨いけど・・
まあ。まだまだ納得はしない・・かな。」
思わずくすっと笑った。
拘ると止まらないからなぁ・・。
雨宮さん。
三沢も真島さんも大変だ。
下手したら徹夜かな。
1日じゃ終わらないだろうけど。。
新も一本掴んでモグモグと食べ進める。
「歴史の一歩を味わえるのもまた格別でしょ。」
ニコッと微笑み 頑張っている人達へ
想いを馳せるように ちらっと時計へと目をやった。
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