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親心

「ただいま。」 涼介がいつものように店のドアを開けて 中に入ると 既に閉店時間を過ぎているのに 客が一人カウンターに座り ちらっと視線を向けた。 げ・・。 久米さん・・。 「おかえり。」 新は俺に向かってニコッと笑みを浮かべると 「もう閉店なんで。」 また少し冷めた声音で 残っていた客へとそう言う。 でも久米さんは無視して俺に向き直り 「叶様。先日は有難うございました。」 そう言って頭を下げた。 いやいやいや。 隠してますけどーーーーー。 たまたま雨宮さんの話になり 上手く誤魔化せたと 思ってたのに・・・。 案の定 新は眉間にしわを寄せ ちろっと俺を睨みつけた。 「涼。どういう事?」 あー。 ヤバい。 「ああ・・えっと。。ああ!そうそう。 雨宮さんのタレ完成したんだよ。 さっき持たせてくれてさ。 新にも食わせてやってくれって。 一緒に食べ・・・ま・・しょう・・・。」 「涼。」 冷めた声音で遮られ 新は無言でツンツンと カウンターの椅子を指差す。 ・・・ですよね。 すごすごカウンターの椅子に座り 焼き鳥のビニール袋をカウンターに置くと 新はそれを掴んで一旦引っ込める。 腕を組んで さて。と口を開いた。 「一体どういう事?」 「話を伺いたくて私が勝手に押しかけただけですよ。 叶様は心配をかけないように黙っておられたんだと 思います。」 久米さんがそう言うと 新は更に顔をしかめた。

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