210 / 292

2

「何。話って。」 新の問いに 久米さんはお代わりを要求するだけで 一向に説明しようとしない。 ムッと口をへの字にして 新は俺へと視線を移す。 あー。 はい。 「・・いやさ。新のお父さんが新に会社の 一部事業を任せたいから店辞めろって言ってるって。 話を聞いてくれないから俺から説得して くれないかって 久米さんが・・。」 「はぁ?」 大きな声で新はそう返し 「なんの話? 知らないよ。そんなの。 そんな筈無いし 俺はもう随分前に縁切ってるから。 向こうだって俺が何やろうと関係無いって。。」 そこまで言って ジロッと久米さんを睨みつけた。 「久米。どういうつもり?」 久米さんは涼しい顔でお代わりのスコッチの ロックに口をつける。 「まあ。嘘ですね。」 ・・・嘘。 今度は俺がぽかんとする番だった。 「は?・・え。あの・・嘘つくためにわざわざ 俺の事待ってたんですか・・え・・何の為に・・。」 「新様のお相手がどういう方なのかをきちんと 見定める為です。」 久米さんはそう言ってにっこりと微笑んだ。 ・・見定める。 あー。 そーゆーこと・・・。 新は表情を強張らせた。 「それはそっちには関係ないってあれ程・・。」 「関係なくはありません。」 ピシッと子供を叱る様に久米さんは遮る。

ともだちにシェアしよう!