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「・・で? そんなに輩が付き纏ってたんですか。」
敢えて 揶揄うようにそう言うと
新はちろっと俺を睨む。
「涼。ちょっと楽しんでるでしょ。」
「ああ。まあ。。かなり?」
顔を見合わせ くすくす笑い出す。
少し気が楽になったのか 新はぽすんと俺の肩に
寄りかかった。
「人間関係なんて何の保証もないでしょ。
自分の親を見てたらさ。結局別れたし
あの人達は何のために結婚して
俺を産んだんだろうってずっと思ってた。
だから。好きだの愛だの全く信じてなくて。
それなりに遊んでたのね。涼と出会うまでは
かなりいい加減な奴だったと思う。
男も女もどうでも良かったし。
それに久米が言うように調べれば
俺が親父の息子だってわかるんだよね。
そうすると今度は財産目当ても近づいてくる。
そっちは確かに久米が必死に追い払ってたかな。」
へえ。
ホントにあるんだ。そんな事。
まあ。でもこのルックスでゼネラルコーポレーション
社長の息子だったら そりゃとんでもない上玉。
そういう奴らが近づいてきても
おかしくはないか・・。
「この店を継ぐ事に決まった時
久米はここの権利証を持ってきた。
手切れ金代わりだな。
最後も金で片をつけたんだ。そう思ってね。
要らない。家賃払うって言ったんだけど
久米に最後だからって説得されて。
受け入れる代わりに 親子の縁もこれで切れる。
法律的には切れなくても もう終わり。
そういう事だなって 理解した。
それからは一切関わりがないし
あの人の息子だって口にした事も無い。
だから本当にもうあの人は俺とは関係ない。
久米にこんな事される謂れも・・。」
「うん。そうだけど。
でもさ。お前 今 腹ん中ぐちゃってるだろ。
内心久米さんに悪い事したなって思ってない?」
新の気持ちは痛い程わかる。
でも。
カウンターに肘をつき 反対の腕を伸ばして
ツンツン鼻を突きながら 敢えてそう指摘すると
新はぐむっと口籠った。
ほら。やっぱりな。
新の冷たさは トラウマからきてるもんだけど
でも 心底冷たい奴じゃない。
俺には一度だってあんな風に言ったこと無いし。
久米さんの気持ち わからない様な奴じゃ
無いんですよ。
ね。。
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