215 / 292

7

そっと体を離し立ち上がってカウンターの中に入る。 雨宮さんが持たせてくれた焼鳥を皿に並べ ラップでチン。 これくらいはね。 出来ますから。 温まり ラップを外すと 甘い香りが広がり ほら。と新の前に皿を差し出した。 何も言わずに1本掴んで齧り付く。 ああ。と笑みを浮かべた。 「旨いね。濃厚なのに果実の酸味がフワッと。 継ぎ足していったら更にまろやかになるかな。 焼き立てはもっと旨いだろうし 流石 雨宮さんだね。」 「だろ。」 結局三沢は最後まで付き合いたいと何日も通い 最終確認の今日 俺も立ち会わせてもらった。 「すげえ旨いって言ったらさ。三沢と山崎さん 抱き合っておいおい泣き出して。 大変だったんだろうなぁ。 雨宮さんも三沢に感謝してくれてさ。 使う事にした たまり醤油の追加発注に これからは引き続きお前がうちの担当やれって 言ってくれてまた号泣しちゃって。 山崎さんに何 泣いてんだバカって言われて お前も泣いてるだろって言い合いしてた。」 良かったよなぁ。ホント。 知らないうちに 山崎さんとタメ口で あーだこーだ楽しそうに言い合うようになってて。 山崎さんもかなり感化されたのか 仕事に前向きになりましたって真島さんも喜んでた。 「雨宮さんに お前にも心配かけたから よろしく言っといてくれって言われたよ。 差し入れしてくれてたんだって?」 「ああ。。うん。真島さんに連絡取ったら 閉店後から仕込みギリまでやってるって 聞いたからね。。」 そう。 新はそういう奴。 だからこそ。 「久米さんにさ。ああ。結局嘘だったらしいけど くだらない仕事辞めさせて 会社に入らせたいって お父さんが言ってるって聞いて。 何がくだらないだって 俺。キレちゃったんだよ。」 「え?」 そう。 すげえ腹が立った。 「何がくだらないんだって。あんなに一生懸命 やってて 例え安定してなくても 新なら何があっても 自分の力でちゃんと這い上がれるって。 必死に毎日頑張ってるからって。 まあ。だから説得とか出来ないって断って 帰ってきたんだけど。。」 でも。

ともだちにシェアしよう!