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まあ。間近のイケメンに歯向かえる訳
ないんですけどね。
その破壊力ったら もう・・。
ね。
で。
新に連絡先を聞き 久米さんに電話して
この間会ったファミレスで待ち合わせをした。
「すいません。お待たせしました。」
ラストの客との打ち合わせに少々手間取り
約束の時間を少し過ぎた中 急いで店に入ると
久米さんは既に待っていた。
慌てて近づき頭を下げると コーヒーカップを置いて
にこっと微笑み ふるふると首を振る。
「いえ。お忙しいのに申し訳ありません。」
ドリンクバーでコーヒーを持ってきて席に着き
さて。どうするかと思った時
久米さんが先に口を開いた。
「叶様にはいろいろとご迷惑おかけ致しました。
騙すような真似をしまして申し訳ありません。」
「ああ。いえ。それはいいです。久米さんが
ご心配だったのはよくわかりましたから。」
そう言うと 久米さんは少し寂しそうに
笑みを浮かべる。
「新様が中学に上がる頃からお世話をさせて
頂いておりまして。最初お会いした時
子供らしさの無い冷めきった表情に
衝撃を受けたのをよく覚えております。」
昔を思い出すかのように 久米さんはそう
話し始めた。
「新様が生まれた頃は 檜垣も会社を立ち上げた
ばかりで脳内は仕事の事しかありませんでしたし
元々仕事以外興味のない男で。
子供が出来ても どう接していけばいいのか
わからなかったんだろうと思います。
奥様もご自分で仕事をされてらっしゃいましたし
ほとんど育休も取らず復帰されたそうですから
新様の傍には全くいらっしゃらなかったと
お聞きして ああ。だからかと。。
内心可哀そうにと思っておりました。」
どう接すればとか。
考える必要あんのかなって思うけど。
そんなの。なんの言い訳にもならない。
まあ。でもそういう人だったんだな。
新があれだけ傷ついている事も知らないで。
知ろうともしないで。
金で全てを片付けて。
親でしょうが。
心底腹が立ってくる。
俺の表情が変わったのを見て取ったのか
久米さんはコクンと頷いた。
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