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「あの。久米さんはこれからどうされるんですか。
アメリカにお帰りに?」
はい。と頷く。
「日本支社での用件も終わりましたし
来週向こうに戻ります。
これで何も思い残すことは無くなりました。
同性同士。色々と大変な事もあるかとは思いますが
新様のお傍に居てあげてください。
宜しくお願い致します。」
そう言ってまた頭を下げた。
本当に新を心配してたんだな。
だったら尚の事。
「あの。今日お越し頂いたのは
ちょっとお願いがありまして。」
そう切り出すと ん。と久米さんは首を傾げる。
「お願い・・でございますか。」
そう。
これが新の我儘ってヤツ。
です。
「明日の夜ってお時間ありますか?」
そう尋ねると怪訝そうに眉を潜め
それでも はい。と頷く。
よし。
「じゃあ。ご飯ご馳走させて下さい。
美味いんですよ。超おススメです。
FACTORYっていう店なんですけど。」
新の店名を告げると 久米さんは驚いて
口をぽかんと開ける。
「店主が是非お越しくださいって言ってます。
腕にヨリをかけておもてなしさせて頂くそうです。
俺もお相伴に預かれるんで楽しみなんですよ~
なんか新作が出来たらしいんで。
アイツの飯 マジで旨いっすから。
食べないと後悔しますよ~。ホント。」
雨宮さんの作業を見ているうちに思いついたのが
あったらしく。
ここ数日はずっとそればっか閉店後取り組んでて。
出来上がりまだ食べさせて貰えてないんだよな~
久米さんは暫くフリーズしたまま
じっと俺を見つめる。
まあ。戸惑いますよね。
でも。
今の新が久米さんにしてやりたい事。
ですから。
「お待ちしてます。俺。あの店のCEOなんで。
後悔はさせませんよ。マジです。」
ニコッと笑みを浮かべて自慢げにそう言うと
久米さんはくしゃっと表情を崩し
「あ・・ありがとうございます。
楽しみにしていると・・お伝え下さい。」
そう言って 潤む瞳を隠しもせず
また深々と頭を下げた。
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