225 / 292

どんよりとした空から しとしとと 冷たい雨が降っている。 走り去った電車の残像を見ているかのように 新は一人じっと佇んでいた。 その背中が寂しそうで。。 こういう時って。 なんて声かけたらいいんだろうな。 ・・いや。 なんも言わなくていいのか。 うん。 涼介はゆっくりと近づき 新の横に並ぶ。 ぎゅっと手を握られ見上げると 眼鏡越しの瞳がじんわりと潤んでいるのが目に入り 胸がきゅっと苦しくなって自分の視界も歪み始めた。 そんな俺の様子を眺めながら 新はぽつりと呟く。 「・・泣いてやろうよ。泣いてくれる人が いるってわかったらきっと喜ぶから・・。」 そういう新の声も震えてる。 ・・うん。 そうだな。 きっと 本人も泣いてるかもしれないしな。 握られた手を力強く握り返し 零れる涙をそのままに 既に見えなくなった姿を 見送るように二人でその場に立ち続けた。。。 -------------------------------------------------------

ともだちにシェアしよう!