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「新ちゃんもすごいわよねぇ。始めた頃とは大違い。
最近じゃなかなか入れなくなっちゃって
何回かお店の前で諦めたのよぉ。」
閉店間近のカウンターで水割りを飲みながら
ぶつぶつと茂さんは管を巻く。
「ごめんごめん。食事客が増えたからね。
連絡してくれれば予約しといたのに。」
新は茂さんの大好きなチリコンカンとバゲットを
サービスね。と言いながら目の前に置いた。
「わあ!ありがとぉ。」
シナを作り 新に向かってウィンクすると
早速バゲットを掴み ふるふるとかぶりを振る。
「そんな訳いかないでしょぉ。
オカマが酒飲むだけで予約して席潰すなんて。
で? 涼ちゃんまでお手伝いしてるなんてびっくり!
しばらく来ない間に一体何があったの?」
バゲットの上にたんまりとチリコンカンを乗せ
あんぐりとデカい口で齧り付くと
美味しい!とくねくね体をくねらせた。
デカい人が体をくねらせるとこれまた迫力が
ありましてね。
思わず笑いそうになり必死に飲み込む。
茂さん。
新に迷惑かからないようにってノーメイクで
フツーの小太り中年おじさんなんだけど
仕草はどうしてもそっちが出ちゃうんだよな・・。
こっちの業界系の小さなスナックをやっていて。
新は大学生の頃 日本に帰ると 友人と
よく行っていたらしい。
だからかなり古い知り合いで その店の常連さん達が
新がこの店を始めた頃 よく来てくれていたらしく。
おじいさんから継いだ時は形態がバーだったからな。
それに代替え時はそれまで店についていた客は
大体足が遠のくもんで。。
それを知った茂さんが常連さんに行ってやってと
お願いしてくれていて 随分と助かったって
前に話してた。
でも。
言葉通り最近の店の様子を慮ってか
ここの所来てなかったみたいだけど。
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