234 / 292
10
「だからあれは・・・。」
説明しようと口を開きかけ 思い留まる。
まず彼女のいるお前に関係あるか?
それに 勝手に話すのも 堀田に悪いし
本人は他に知られたくないかもしれない。
この間の茂さんの言葉が思い返された。
何事にも誠実であれ。ってね。
・・止めた。
さて。とコーヒーを飲み干すと
立ち上がり伝票を掴む。
「まず。俺は堀田と付き合ってない。
だけどそれって彼女のいるお前に関係あるか?
っつーかそれが気になるってのは
堀田に対してそういう感情があるってんだろうけど
お前がしてる事って不誠実ってやつじゃねえの。
今の彼女にも堀田にもさ。
俺はそういう奴の話を聞く気は無いし
お前が直すべきはまずそういう考え方じゃね?
そういうの。仕事でも出るぞ。」
じゃな。と手をひらひらと振り
顔を真っ青にして小さく身を縮めて
微動だにしない木崎をそのままに喫茶店を後にした。
あー。
めんどくさい。
まあね。
誰だって人を好きになっちゃう事ってあるし
それが被っちゃうこともあるんだろうけど。
でも。新がそういう事したらと思うと
死にたくなるぐらい嫌なんですよね・・。
腹の中イラっとしながらその後の仕事をこなし
課長に直帰の連絡を入れて電車に乗る。
早く新の旨い飯食って 愚痴聞いてもらって
すっきりしてぇなぁ・・・。
電車を降り駅を出て商店街を抜けると
店が見えてくる。
あれ。
誰か店前に・・・。
ギャーギャー大声が聞こえてくる。
なんだろ。
酔っ払いが騒いでんのか?
まだ店やってるんじゃ・・。
涼介は慌てて走り出した。
ともだちにシェアしよう!