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店の前で人が揉み合ってる。
あれ・・。
涼介は駆け寄り 「新!」と声をかけた。
新は誰かを羽交い絞めにしながら
こちらへ振り返り 困ったように眉を下げる。
新が必死に止めているのは・・マキさん。
その後ろで泣きながらオロオロと茂さんが立っていて
殴られたのかコンクリートに一人
男性が転がっていた。
あれ。この人 昔からの常連さんの・・。
「アンタ!もう一回言ってみなさいよ!
ボコボコにしてやるからっ!!」
マキさんが大声で怒鳴り上げているのを
新が一生懸命に宥めている。
「ちょ・・ちょっと待って待って。」
急いで間に割って入り 転がっていた常連さんを
立ち上がらせると 顔を紅潮したその人は
ペッと血を吐き出した。
「ホントの事言って何が悪い。
何も知らないから教えてやったんだろ。」
そう吐き捨てて そのまま足早にその場を
去っていく。
「・・・も・・う。いいか・・ら・・。」
茂さんはおいおいとその場に泣き崩れ
新がそっとマキさんを離した。
えー。
これはヤバイな。
みんな冷静じゃないし。
それに。。
そっと店内を覗くと まだ数名客が居て
みんな小さな窓から何事かとこちらを見ている。
ああ。ヤバいですね。これ・・。
「新。店戻っていいから。マキさん、茂さん。
上にあがりましょう。」
そう言ってマキさんの腕と茂さんの腕を掴んだ。
「涼・・。」
新が心配そうに顔を歪める。
「大丈夫だから。お前はとりあえず店なんとかしろ。
お客さん戸惑ってんだろ。」
な。と言って 二人を引き摺るように建物の横の
階段を涼介は上がっていった。
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