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鍵を開けて二階の電気をつけると 「どうぞ。中入って下さい。」 そう言ってマキさんと茂さんの腕を引っ張り 怖気づく様子を無視して中に入れる。 まあ。流石にプライベートスペースに 足を踏み入れるのは気が引けるんだろうけどな。 無理矢理リビングへと連れて行き 「そこ座って下さい。今 酒持ってくるんで。 ウィスキーでいいっすかね?」 そう声をかけると おずおずと二人は頷いた。 やっと冷静になったのかマキさんの顔が白い。 あんな風に怒鳴り上げてんの初めて見たしな。 元気で明るくて キャッキャしてる イメージしかなかったし。 マキさんも結構年齢はいってるけど 痩せてるし化粧すると綺麗な人だ。 まあ。今日はこちらもフツーのおじさんだけど。 キッチンへ行き 棚からウィスキーを出し 氷を用意する。ソーダとミネラルウォーターは 冷蔵庫。それから・・・ トントンと階段を上がる音がして 新が顔を出した。 「涼。大丈夫?」 「おう。大丈夫だ。まだお客さんいるんだろ。」 うん。と頷く。 「食事はもう終わったから多分そろそろ帰ると思う。 もうちょっとだけお願いしていい?」 「心配すんなよ。話聞いとくから。」 敢えて明るい声音を出し 新の真似をして ウィンクをしてみる。 まあ。両目瞑っちゃうんですけどね。 新は少しホッとしたように笑みを浮かべ ありがと。と綺麗なウィンクをこちらに返し トントンと下に降りていった。 流石ですね。 年季が違いますから。 さて。 お盆にグラスも乗せてリビングに戻り テーブルに置いて よっこらしょと座る。 ここはな。 「あの。俺 酒作るのは素人なんで プロの方にやって貰った方がいいかなと。 俺も今日仕事でちょっとムカッとしたんで どうせなら旨い酒飲みたいんですよ。 お願いしていいっすか?」 そう言いながらマキさんへと視線を向ける。 マキさんはちょっと口元を緩め うん。任せて。と頷いてくれた。

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