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「・・で。アイツが言ったの。
スギさんは最近若い男に入れあげてるって。
金も相当使ってるし 知らないのは
茂さんだけだって。」
マキさんは憤然としながらそう言った。
あー。
それでか・・。
涼介はマキが作ったソーダ割りに口をつけた。
茂さんがうちに来た時の話をマキさんにして
じゃあ久しぶりに一緒に行こうと
今日来てくれていたらしい。
で。たまたまあの常連さんと一緒になり
ちょっと酔っぱらっていたようで
急に隣に座ってきて 絡まれた。
それがそんな話で ブチ切れたマキさんと
常連さんが揉め始め 外に出ろ!と大ゲンカ。
止めに入った茂さんと新の前で
マキさんが常連さんを殴りつけちゃった・・と。
そういう事ですね・・。
まあ。マキさんがキレるのも分かる。
そんな話。他人から聞くのが一番辛いよな。
茂さんは酒に口もつけず 呆然と一点を見つめてる。
何か心当たり。あるんだろうな。
この間も忙しくて家に居ないって言ってたけど
それだけじゃないような気がしてたのかも・・。
自分のパートナーが他の男に入れあげてる。
そんな話聞かされて普通で居られる訳が無い。
かける言葉が見つからず つい黙り込むと
茂さんは ハッと気づいたように顔を上げ
無理矢理笑みを口元に浮かべた。
「大丈夫よぉ。こんなの今に始まった事じゃ
ないから。若い頃からね。何度もあったし。
でも最後は結局戻ってくるの。
だからだいじょう・・。」
「でも。ママ。店の権利書見つからないって・・。」
マキさんの遮る言葉に 茂さんはまた顔を
一瞬で強張らせた。
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