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権利書? 「え・・。それって・・。」 「何。権利書って。」 いつの間にか新が二階に上がってきていて リビングの入口で立ち尽くし そう聞いた。 その手には茂さんが好きなチリコンカンと バゲットが乗ったお盆。 立ち上がり 新の手からお盆を受け取ると テーブルに置き 表情を強張らせている 新を無理やり座らせる。 茂さんはぐむっと口籠り その様子を伺っていた マキさんはため息をつきながら口を開いた。 「あの店の権利。二人の共有なのよ。 ママはいつかあの人と一緒にあの店 やるつもりだったから。定年後 ママに 雇われてるって思わせたくなかったのよね。 プライドだけは一人前だからさ。あの人。 そのクセ 安月給だからずっとママに金銭面も 面倒見て貰ってて・・。」 「・・それは。好きでやってた事・・だったから。」 茂さんはぽつりとそう零す。 ああ。成程・・。 若干ヒモ感あったって訳か・・。 「権利書って。勝手に売られたりしたら マズイんじゃないすか。。」 もうここまできたらオブラードに包みようがない。 すると茂さんが上目遣いに俺たちへと 視線を向け はぁ・・・と深く息を吐いた。 「もう・・手遅れかもしれないわね・・。」 え。とみんなで息を飲む。 「手遅れって?」 新はぐっと身を乗り出して すぐに俯く 茂さんの顔を覗き込んだ。

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