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「・・さっきも言ったように。今までも 同じような事は何回もあったの。 若い子が好きなのよね。若くて可愛い子。 でも。涼ちゃんみたいに まっさらな子なんて そんなにいないじゃない。大体騙されてて。 繋ぎ止めるものはお金しかないから 勝手に店の売り上げ持ち出された事もあったし。 でも。こんなに帰ってこないのは初めて。 会社にも行ってないみたいなの。 年も年だしね。最後の恋とか思ったのかしら。 バカよねぇ。いい年したオッさんが。。」 茂さんは寂しそうに小さく微笑む。 「でもね。あたしも悪いの。ずっと許してきたし 自分にはあの人しか居ないと思って ここまで来ちゃって。今更 人生やり直すには 薹が立ち過ぎちゃったから。。。 怖いわよぉ。ひとりぼっちになるなんて 認めたくない。孤独死なんて死んでも嫌。 でもこんなオッさん 誰も拾ってくれないし。 だから仕方がないの。すっかり気持ちが離れてるのを 見て見ぬ振りして保身に走ってきた バチが当たったんだわね。」 自虐的にくすくすと笑った。 ああ。もう覚悟を決めていたのかな。 ただ なかなか思い切れなかっただけで 腹の中では諦めていたのかもしれない。 胸がぎゅっと苦しくなる。 茂さんはグイッとロックを飲み干すと ふう。と息を吐き 立ち上がった。 マキさんは泣き始め 肩を震わせている。 「新ちゃん。涼ちゃん。迷惑かけてホントに ごめんなさいね。マキも 心配はいらないから。 ちゃんと知り合いにあなたの事頼んでみるし大丈夫。 さて。これ以上長居は迷惑よ。帰りましょ。」 「あ・・あの。茂さんは・・どうするんですか。」 俺も立ち上がり 引き留めるようにそう聞くと 茂さんはニコッと笑みを浮かべた。 「田舎の母親が高齢なの。バレてから帰って ないんだけどね。。兄貴夫婦も大変らしくて 一度戻ろうかと思って。なかなか思い切れなかった んだけど いいきっかけになったわ。 だから心配いらないわよ。本当にありがとう。」 そう言って深々と頭を下げてから上げると微笑む その瞳からツーっと涙が零れ落ち じゃあね。と 泣きじゃくるマキさんの手を引いてリビングを 出て行く。 慌てて見送ろうと後を追いながら 新へ目を向けると 厳しい表情のまま 拳をぎゅっと握りしめ すっかり冷め切った手付かずのチリコンカンを前に 小刻みに震えながらその場にじっと固まっていた。

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