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体を通して 不安がじんわりと伝わってくる気がして
ぽんぽんと広い背中を叩く。
「茂さんにはさ。出来る限りの事はしようよ。
新もそう思ってんだろ?」
ゆっくりと俺を離すと新は強い光を帯びた瞳で
俺をじっと見つめ コクンと頷いた。
だよな。
このまま黙ってるような奴じゃないし。
とはいえ。
「まあ。残念ながら二人の関係性に関しては
俺たちが口出し出来る事じゃないけどな。
ただ。店の事はさ。何か出来るかもしれないから。」
「うん。そうだね。知り合いに不動産関係
強い人がいるからちょっと聞いてみる。
共同経営者の片割れが勝手に権利を売却しても
無効に出来る方法はあるんじゃないかと思うんだ。
茂さんが同意してないのに売れるとなると
文書偽造の可能性もあるからね。
ただ 茂さんがどうしたいのかは尊重しないと
いけないから それももう一度話してみる。」
新はそう言って また俺を力強く抱きしめた。
「俺も努力するから。ずっと涼に傍に居て
貰えるように。。」
「おう。でも お互い無理は禁物な。
大丈夫だよ。今まで通りで。
俺 なんも不満とかねえもん。
ある訳無いじゃないですか。ねえ。。」
ありませんよ。
いつだって俺のことばっか考えてくれて。
愛想尽かされるなら俺の方なんじゃねえのかな。。
・・絶対嫌ですけど。
安心させるように 抱きしめ返すと
新は俺の頭に唇をつける。
大丈夫。
こうやって温めあっていけば きっと。
うん。
大丈夫。
雨が激しくなりはじめた。
「流石に寒いな。風呂入ってあったまろ。」
ほら。と新の手を引いて 中に戻る。
茂さんが店を閉め 俺たちに見送られ
田舎へ帰っていったのは
それから丁度二週間程経った ある雨の日だった。
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