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ああ。そうだった。 「三沢も木崎も頑張ってたみたいだね。 これで心配なく休みも取れるんでしょ。」 叶は今までずっと一人で独自の路線を貫き 仕事をしてきたから その分業務量が膨大で 代休も有休もなかなか取れていない。 企業として働き方改革を打ち出していて そういう社員はやり玉に挙げられ 上司から指導して貰う事になっている。 橘課長は一定の理解を示しながら それでも叶に部下を育てる名目で 休みを取るように促していて ここ数カ月 取り組んでいたのは知っていた。 「まあ。まだまだ心配ですけどねぇ。 とはいえもう予定も入れちゃったし 休んでやりますよ~。ガッツリとね。」 叶はにこにこと笑みを浮かべながら 隣の椅子に座り くるくると回りだした。 何か楽しい予定でもあるのかな。 珍しく嬉しそうに顔がほころんでる。 「パートナーさんと何処かに行くの?」 誰も居ないし。 そう思って聞いてみると 叶は え。と キョロキョロ辺りを見渡した。 思わず くすっと笑う。 「誰も居ないって言ったの叶だよ。」 「そうだけどよ・・。会社でこの話は ハードル高いだろ。いくらなんでもさ。 ましてやここ総務課ですよ。」 ぷくっと頬を膨らませて腕を組む。 この間家に行った時にも思ったけれど 叶って意外と可愛らしいんだな。 普段は口調も荒いし なんでも大丈夫でーすって 波風立てないように飄々としてて。 でもパートナーさんの前ではあんなに グチグチ言いながら甘えた声を出す。 だけど。 それを知らなかったっていう事実。 つまりそれだけ慎重に 叶は今まで 生きてきたって事・・。

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