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「俺さ。普段は結構愚痴ばっか言ってんですよ。
新は毎日それを聞いてくれてて。
悩みやすいっていうかさ。で。それでいて
自分でなかなか抜け出せないのを
アイツが手を変え品を変え対応してくれてて。
俺が前を向けてんのもアイツのおかげでさ。
まあ。だからまた俺が悩むってわかってて
はい。どうぞとは言えなかったんだろうけど。
実際にさ。お前と十条の話聞いて
俺の件がバレたから加速したんじゃねえのかって
内心心苦しくて ずっと気にしてたんだよ。
アイツもそれ知ってるから・・。
とはいえ。ごめんな。」
カリカリと頭を掻きながら叶は頭を下げる。
そうじゃない。
「謝らないでよ。悪いのは俺だったんだから。
逆にはっきり言って貰ってよかったし。
ずっと逃げてて・・。向かい合う勇気も無くて
ただ不満や愚痴を吐き出そうとしてただけなんて
今 思い返しても恥ずかしくて
それこそ後悔してる。」
本当に言って貰ってよかった。
とはいえ。
今も なかなか向かい合えてもいないんだけど・・。
「叶が羨ましいな。あんな素敵な人が傍に居て。
あんなに理解してくれて無条件に甘えられるなんて
そんな関係性あるんだなって驚いたし。」
そう。
本当に羨ましい。
じゃあ自分は。
大和とそんな関係性を築いていけるんだろうか。
叶は ん。と唇を尖らせた。
「・・何。服部も新みたいなのタイプ?」
え?
視線を向けると 気に入らなそうに不貞腐れてる。
ああ。
意外と嫉妬深いんだ。
それも初めて知ったな・・。
ちょっと意地悪心が湧き上がる。
「そうだね。新さんカッコいいし。
ああやってはっきり物を言う人好きだな。」
そう言うと叶は目を見開き あたふたと慌て始めた。
「え・・。あの・・ダメだぞ。
新は絶対ダメ・・・。」
「何言ってんの。当たり前です。
俺 元々そっちじゃないし誰でも彼でも
好きになる訳じゃないから。
逆にそうなれてたら今こんなに悩んでないし。」
くすっと笑うと 揶揄われたのがわかったのか
なんだよ~。と叶は更に不貞腐れる。
そう。
そうだったら良かった。
なんで。俺は大和しか愛せないんだろう。
それも 理解し合えないのに まるで
蜘蛛の巣に絡まったみたいに
ただ身動き取れない状態で。。
ホントに違うな?って何度も念を押してくる
叶を適当にあしらいながら 雨が叩きつける
窓へと目を向けた。
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