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「自分にとって何が一番大事か。それに気づいた時 取り戻すにはどうしたらいいかを考えた。 薫は言葉を信用しないだろう。 まあ。それまでの行動を知っていて信用しろと 言っても通用しないしな。だからこれを作った。 開発には3年以上かかっている。 昔 言っていたよな。醤油は甘めが好きだが 添加物が気になると。」 ・・言ったけど。 一時期 そういう方面を勉強していたのもあって 大和と言い争いになったのを思い出した。 「で・・でも。添加物も悪い物ばかりじゃ 無いって・・大和は・・。」 食品メーカーに入り 総務であっても 自社製品にはそれなりに知識はある。 大和の言う通りだったと今は思っていて。 どうしても生真面目に物事を捉えがちで 融通が利かないのは 自分でよくわかってる。 ・・そう。 話を聞くべきは自分。 理解しようとしないのは自分。 今だって・・。 「薫の言う事は一理ある。気になる奴も居れば 気にならない奴も居る。今までの俺は そんな事はどうでもいいと思っていた。 だが。それは大きな間違いだった。 涼介の舌は誤魔化せず こんな物は売れないと 言われた事は何度もある。 ならば 作ればいい。薫が喜ぶ物を作ろうと 開発に着手し やっと見通しが立った。 涼介も味に納得してくれたし 今 軌道に乗せようと 頑張ってくれている。」 醤油を握る手を上から覆われた。 「普通は指輪でも渡すんだろうが 俺が出来るのは これくらいしか無い。若い頃にしでかした過ちは いくら言い訳しても納得はしないだろうが この3年。少なくともこの3年はお前の為に 出来る限りの努力はした。俺が一つの事しか 出来ないのは 薫が一番わかっている筈だな。 ならば 一人しか目に入らないのも 理解出来るだろう。違うか?」 ぎゅっと強く手を握られ 強い眼差しで 見つめられ ゾクッとする。 【薫は言葉を信用しない】 それは。 自分が凝り固まっているから。 ガチガチに固めて 聞く耳を持たないのは・・ 自分。 でも今は。 大和の言葉が すっと胸に響き じんわりと染み渡っていく。

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