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もしも
さて。
荷物を棚から出し 飛行機を降りて
スーツケースをガラガラと引きながら
出口へと向かう。
新は後ろからついてくる涼介へと目を向けた。
一時間ちょっとくらいのフライト。
涼は乗った瞬間に寝て。着いた瞬間に起きる。
でも ずっと俺の手をぎゅっと握ってて
可愛かったな・・。
高所恐怖症なんだよね。
思い出し笑いが口元に浮かぶと 涼は目ざとく気づき
なんだよ~と唇を尖らせた。
「ううん。何でもない。ほらあっち。」
出口のサインを指差して 涼の手を引くと
恥ずかしそうにキョロキョロと辺りを伺いながら
それでもそのままに一緒に歩いていく。
最近あんまり気にしなくなったよね。
前はよく振り払われたけど。
知らない土地っていうのもあるのかもしれない。
店の改装日が決まって。
全ての準備が終わって 涼も頑張って
休みを取ってくれた。
念願の大阪旅行。
観光自体はお互いあまり興味が無いから
遊園地も行かなければ大阪城も行かない。
涼が見たいお笑いの舞台を見て
食べたい物を食べまくる。
「題して。大阪見ちゃえやっちゃえ笑っちゃえ
食い倒れツアー!」
涼はそう宣言してぱちぱちと一人で拍手した。
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