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それで?と先を促すと 握った手に力がこもる。 「日々をどう過ごすかは涼の言う通り。 そうしていこうって思ってるんだけど。 もしもの事を考える様になってさ・・。」 「もしも?」 うん。と頷く。 「俺たちを縛るものって何も無いでしょ。 結婚も出来ないし 養子縁組も涼がカムするまでは なかなか難しいしね。 だからって焦っても欲しくない。 だけど。やっぱり何か確固たる繋がりみたいな物が 欲しいなって思ってて。」 ああ。まあ。確かにな・・。 いつまでもこのままじゃいけないのは わかってっけど だからってはい。じゃあ 今。言ってきますって訳には正直いかない。 逃げてばっかもいられないんですけどね・・。 「それでね。久米に相談して俺の遺産。 涼に残せるように法的書類を作って貰う事にしたの。 ただ。やっぱり他人だから書類があっても 全額が涼にいかないかもしれない。 それで。一番嫌だなって思ったのがあの店。」 「店?」 まず。遺産どうのこうのって話にビックリして。 いまいち理解がついていかない。 ついオウム返しに聞き返すと 新はコクンと頷いた。 「あの店。あの家が他の人間の手に 渡るのだけは耐えられない。だから涼と 共有名義の手続きを取りたいと思ったんだ。 ホントは店の権利もって思ったんだけど リーマンである以上 副業と取られる事は 出来ないかもしれないでしょ。だったらまず あの建物と土地を共有名義に・・。」 ちょ・・ちょっと待って。 「お前さ。それって新が死んだらって話?」

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