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「ホントにいいの。後悔しない?」 黙っていれば嫌な思いもしないで済む。 涼を辛い目に合わせたくない。 すると 涼はニヤッと笑う。 「新さん。それは言っちゃいけないんじゃねえの? 後悔なんてしたって意味がないって 服部に言ったんだろ。しませんよ。 俺はね。悩んでぐちゃぐちゃしてグチグチ 言いますけど 極力後悔はしないんです。 後悔したって新の言う通りどうにもなんないしさ。 俺がゲイじゃなかったら。 こんな風に生まれなければ。 人に迷惑かけてんのかもしれない。 もしかしたら居ない方が良かったのかも。 そんな事考えようと思えばいくらだって 考えられるし 考えちゃう時もあるんだけど 考えた所でそれは全部タラレバってヤツで ホントじゃないんだしさ。 俺は。新と出会って好きになって一緒に居られて。 幸せだな~って思うし 俺だってずっと ひとりぼっちだったんだからな。 新だけがひとりぼっちだったんじゃないんですよ。 家族が居たって一人だったのはおんなじ。 だから。二人で堂々と一緒に生きていけるように。 まずは この難関を乗り越えるぞ!」 おうっ!と拳を振り上げた。 胸がつまる。 何も返事が出来ない俺に気づき 涼は上げた拳を ゆっくりと降ろし 「・・・嫌か?」 沈黙を否定と取ったのか そっと俺の顔を覗き込んだ。 そうじゃない。 ブンブンと被りを振り 涼の体を引き寄せると ぎゅっと抱きしめる。 「・・すごいなって思って。俺はネガティブな事 ばかり考えてるのに 涼は前を向いて困難にも 立ち向かおうとしてて。 何なんだろ。俺・・・。情けないね・・。」 不安にかられるばかりで。 離れないようにするにはどうしたらとか。 死んだらどうするとか。 魂だけでもとか。 勿論それだけじゃないけど。 でも涼との違いをまざまざと思い知らされる。 涼はゆっくりと体を離すと コクンと首を傾げた。 「いいんじゃねえの。それで。 逆に俺もすげえなって思ったけど。 そんなの全く頭になかったしなぁ。。 新の考えや しようとしてくれている事を知って それでやっと腹が決まったんだからさ。 そうじゃなかったらまたグダグダ考えて 先延ばしにしようとしてたと思うぞ。 実際 さっきまでそう思ってたし。」 苦笑いを浮かべながら ぽんぽんと俺の頭を叩く。 「俺たちはだからいいんじゃねえのかな。 同じじゃないからいいんだと思うけど。 お互いの足りない部分を補っていければさ。 但し。ちゃんと話す事。な。 もう。。すぐどんどこ自分で 突っ走っちゃって 事後報告っての多いんですから新さんは。」 めっ。とワザとらしく睨まれた。 ・・うん。そうだね。 コツンとおでこを合わせる。

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