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4.氷雨SIDE

中学での血液検査の前日、俺は父と一緒に泉里の父親に呼び出された。 「突然呼び出して申し訳ない」 深々頭を下げられながら、俺はよくこの人に頭を下げられるなと、旋毛を見た。 明日ある血液検査で俺達は性別を知る。 その時初めてα・β・Ωに分けられるのだが、社長は事前に学校側にあるお願い事をしているらしい。 たとえどんな結果が出ようが、泉里にはαだと告げて欲しいと。 つまりαじゃなくて、βやΩだったとしてもαだと嘘を告げる。 社長はこれから先泉里をαとして育てるつもりだ。 βをましてやΩをαと偽るのは様々な面で誤魔化すのが困難だ。 溢れ出るフェロモンや発情期は防ぎようがない。 祈る様に皆で泉里の性別がαであります様にと必死に願った。 だが願い虚しく泉里はΩだった。 予定通り学校側は泉里にαだと告げ、本当の結果は泉里の家にだけ知らされた。 受け入れ難い真実に皆落胆していたが、俺は少し嬉しかった。 αとΩは番になれる。 社長はもし泉里がΩだったら俺に番になって欲しいと言った。 幼少期からずっと離れずに側に居る泉里は俺にとって誰よりも何よりも大切な存在だし、愛しいと思える。 「俺が泉里の番になって一生側で守ります」 嘘偽りのない宣言は 「ありがとう。だがそれは泉里が無事社長になって結婚して子供を作ってからにして欲しい」 有り得ない台詞で返された。 えっ、どういう意味だ? 「将来泉里には社長になって貰う。そしてΩかαの女性と結婚して子供を作って貰う予定だ。Ω男性の生殖機能は他の性別に比べると著しく低いが、低いだけで機能がない訳ではない。その点を考慮して結婚相手には妊娠しやすい女性を探すつもりだ。これで結婚と跡取り問題はカバー出来るが、生活面では氷雨くんに沢山の迷惑を掛けると思う。すまないが、これからも協力してくれないか?」 言ってる意味が分からない。 一体どうやってこれから先偽り続けるのだろう。 周囲だけでなく本人にさえαだと嘘を告げ、一生誤魔化すのは無理があるのではないか? 「頼む。有り得ない頼み事をしているのは重々承知の上だ。断ってくれても構わない。だが、君にしか頼めないんだ。氷雨くんが断ったらこの計画は成立しない。因みにαでもΩでも泉里が社長になるのは決定している。が、上の者がαの方が会社が成り立つんだ。いくら国が身分差を無くそうと動いていてもΩに対する差別は完全に消えない。Ω性を隠さず生きていくにはまだ社会は優しくないんだ。氷雨くんもTVのニュースやドキュメンタリーや授業で聞いたり観たりした事あるよね?Ωが未だに世間からどんな目で見られているか。親バカかもしれないが、俺は自分の息子にそんな思いをして欲しくない。だからお願いだ。泉里を守る為に無謀とも思える計画だが協力して欲しい」 頼む、どうか、どうか。 大の大人にそれも社長に泣きながら懇願されて断れる人間なんて居るのだろうか。 面倒事は嫌いだ。避けて通れるのなら俺は避ける方を選ぶ。 だが泉里の事となれば別だった。 もし泉里がΩだというだけで苛められたり性的な目で見られたら、俺はその相手を一生許せない。 αとして生きるのであれば結婚相手が現れる迄誰かの番になる事もない。 色々考えたら断る理由なんてない。 「分かりました。協力します」 俺はその計画に乗る事を選んだ。

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