Ωの発情を抑える為に始まった診察と管理。 突然始めると不審に思われるので、泉里には血液検査の時に病気が発覚したと嘘を告げた。 原因不明の血液の難病だと。 毎朝の体温管理と血液検査と診断と発情抑制剤の服用。 フェロモンを抑える為に点滴をし、見た目を変える為に身体を鍛えさせ始めた。 因みに点滴には微量だが俺の血液が混ざっている。 同じ血液型で同じ年で尚且つ拒絶反応が出なかった為俺の血が採用された。 毎日微量のαの血を採り入れる事によってΩの血を少しでも抑える。 流石に発情期の時は誤魔化せない為休ませているが、本人には本当の理由を言っていない。 抑制剤のお陰で発情しないから何故自分が休まされているのかも理解していないだろう。 沢山させられる運動と同時にプロテインも飲まされていた為か、ガリガリだった身体は程良く筋肉が付き綺麗に引き締まった美しい物へと変わった。 顔付きも美少女から綺麗に整った顔へと変化した。 顔もスタイルも極上の物へと成長し、努力の賜物か学力も運動能力も向上した。 今では誰も泉里をΩだと疑う者はいないだろう。 だが、１つだけ気掛かりがある。 鳳千空。幼稚園からずっと同じ学校に居る奴なのだが、鳳の泉里を見る目はなんか違和感を感じる。 いつも明るく行動力があるからか常に周囲に人集りが出来ている人気者だが、泉里は彼が苦手だ。 時折２人で話している姿を見るが、嬉しそうにしている鳳に対して泉里はいつも不快そうに顔を歪めている。 一体何を話しているのだろうか、気になるが詮索するのは好きじゃない。 敢えて何も聞かなかった。 発情期が近付くと鳳は必要以上に泉里に近付く。 抑制剤と点滴のお陰でフェロモンは完全に抑えられている為誰にもバレる心配はない。 だが、何か感じるのだろうか。 その時の鳳の目は時折欲情した捕食者の目をしている。 泉里を捕られる恐怖を感じ、発情期前後俺は通常より過保護になってしまう。 大丈夫だとは思うのだが、心配なのだから仕方ない。 泉里も俺に甘やかされるのは嫌いじゃないらしく、ウザがられないのがせめてもの救いだ。 そうしてずっと必死に守ってきたのだが、今年は違った。 毎年学校側は１年に１回だけ交流会という名の勉強会を行う。 中学から大学迄各学校で一番優秀なαを選出し、約１週間其処で意見の交換や新たな研究や学力向上の為集まって色々な事をするらしい。 去年は先輩が行ったのだが、３年になった今学年首位の俺は必然的に選ばれてしまった。 其処に呼ばれる事は大変名誉な事なのだが、俺としては約１週間も泉里から離れる事の方が気掛かりだった。 時期的にもうすぐ発情期が来る。 発情期の間は休むが、その数日前位になると毎回鳳が泉里に近付く。 いつもは俺が鳳から守っているが、今回は違う。 側に居られない。 一応念の為少し強めの抑制剤を出して貰おう。 そうすればいつもよりフェロモンも抑えられるし、鳳も変な気を起こさないだろう。 泉里の担当医に身を守る為に今回だけ薬を変えて貰った俺は安心して交流会に向かった。 まさかそのせいで取り返しが付かない自体を招くとは、露ほども考えずに。