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8.泉里SIDE
「大丈夫か?」
放課後鳳くんが保健室に迎えに来てくれた。
よく寝たお陰でスッキリした。
「帰るぞ」
教室から鞄迄持ってきてくれた鳳くんは俺の手を握るとそのまま歩き出した。
で、そのまま先程言っていた買い物になったのだが、何故か俺はずっと鳳くんに手を繋がれたままだった。
「これ似合いそうだな。どうだ、好きか?これ」
「あっ、これも良いな」
俺の香水の筈なんだが、何故か鳳くんが滅茶苦茶張り切って選んでいる。
まぁ、俺より明らか鳳くんの方がセンスあるからお任せした方が良さそうだけど。
なんか不思議。
いつも憎まれ口しか言わない鳳くんが今日はまるで友達みたいだ。
色々歩き回る事1時間、漸く決まった香水。
会計をしようとしたら
「良いから払わせろって」
鳳くんはそのままレジで支払いを済ませ俺にそれをくれた。
その後公園に移動して、鳳くんに香水の付け方を教えて貰った。
付け過ぎたら臭いから量は少なめに。
手首・項・膝・肘・足首・腰・背中・太股の内側の何処か好きな所に軽く少しだけ付ける。
「ちょっ、んっ、やっ、くすぐったいよ…」
実際に付ける箇所を触りながら教えられる為、擽ったくて堪らない。
指先が太股に触れた瞬間
「っあ」
なんとも言えない甘ったるい声が出て物凄く恥ずかしくなった。
「手首だとスグ摩擦で匂い変わっちゃいそうだから太股か足首が付けるのも楽だし良いかもな」
おおっ、凄い。流石お洒落な人は違う。
俺だったら自分に似合う香水選べなかったし、付け方も付ける場所も分からなかった。
何も教わらず自己流で買って付けたら、初心者によくありがちな付け過ぎて臭いってヤツになってた気がする。
尚且つ似合わない匂いだったら恥ずかしい。
「ありがとう」
早速足首に軽く付けてみたら
「うわっ、スッゴイ好きかもこれ」
甘くて優しい香りなのにお風呂上がりみたいな清潔な匂いがした。
上品だ。
「もっと甘いのやスパイシーなのも悩んだんだけどさ、泉里には可愛らしさや上品さや清楚な感じのが似合いそうだし、何よりいつも香る香りと似てるからこれにしたんだ」
よく分からないが、良い香りだし物凄く気に入った。
「一緒に選んでくれてありがとう。これから毎日付けるね」
嬉しくて緩む頬。
ニコニコ笑いながらお礼を言うと
「………………っ」
ん?
何故か鳳くんは片手で顔を隠しながら勢いよく顔を逸らした。
どうしたんだろう?
耳迄真っ赤だ。
「鳳くん?」
不思議に感じ、名前を呼ぶと
「あ~、なんか失敗したわ俺」
クシクシ頭を掻いた。
「俺さ初めてお前見た時一目惚れしたんだ」
一目惚れ?
って何だっけ?えっとお米の品種?
俺を見てお米食べたくなったのか。
お腹空いてたのかな?
「泣き顔とか困った顔とか哀しそうな表情ってスッゲェ可愛いし俺滅茶苦茶好きでさ、ついつい苛めちゃったんだよ。お前の泣き顔スッゴク可愛かったから」
突然始まったいじめっ子の心理の説明。
どうやら鳳くんは他人のしょぼんってした顔が好きなのらしい。
で、その中で一番気に入ったのが俺の表情だったらしく、それが見たいが為に俺に意地悪をしていたと。
うん、かなり迷惑な話だ。
「でも俺今日初めて気付いた。お前笑顔の方が可愛いな。なんか今迄スッゲェ勿体ない事してきた気がする。これからは泣かせたりせず優しくして笑わかすから」
ん、可愛い?
なんかさっきから可愛いを連呼されてる気がする様な、って聞き間違いだよな?
「今迄悪かったな。ごめん」
謝られて、はい良いですよと言える程俺は大人じゃない。
だが、香水プレゼントして貰ったし反省してそうな感じだし、まぁ良いか。
「これから意地悪しないなら許すけど、もうしない?大丈夫?」
「嗚呼、絶対苛めない」
「本当の本当?」
「嗚呼、本当だ」
「……………なら…良いよ」
どうやら突然改心したらしい鳳くんは俺を苛めるのを止めると約束してくれた。
良かった。これで明日から嫌な思いをしなくて済む。
ホッとした。
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